【特集】バレーボール指導論⑤:スポーツ心理学Ⅰ
(2015年3月22日更新)
1. 理論編2:リラックス法
(1)緊張とリラックスの関係
1)緊張状態の時は交感神経が強く働き、逆にリラックス状態の
時は、副交感神経強く働くと言われている。(*1)
*1:両者で自律神経を形成する。交感神経が血管を収縮させ
たり、発汗を促すのに対し、副交感神経はその反対の働き
をするが、互いにバランスをとり合って作用し、各器官の働
きを調節する。
2)人は何故緊張してしまうのでしょうか。それは、未知の体験や、
少し先の未来に対して、あれこれ考えてしまうことに起因して
いる。特にマイナス思考は、交感神経主体の生理反応に大きく
影響を与えるため、スポーツでの体の動きを鈍らせてしまう。
3)体の筋肉も、極度の緊張状態によって、正しい動きが失われてし
まう。加えて、緊張すると血液が脳に集中してしまい、バランス
のとれた血液循環が行われなくなる。血の流れが悪くなると、
下半身や指先などの抹消部分の体温が低下する。すると下半身
や指先がガタガタ震えたりする。
4)スポーツ選手は、現在自分が置かれている環境と、自分の心理
の状態を冷静に観察し、緊張とリラックスのバランスを上手にとっていくことが求められる。
2.実践編2:リラックス法
(1)緊張を起こす本当の原因を探る
1)緊張するときに選手は、「この緊張は試合に負けられない
プレッシャーが原因だ」と考えるでしょう。しかし、人間の心理は
そう単純なものではなく、複雑な構造になっている。
2)深層心理では「この試合に負けるとスポーツ推薦が受けられない」
とか「この試合でミスするとレギュラーから外される」『今日の試合
は好きな彼女が応援に来てるから恥をかきたくない』などの理由が
緊張のもとになっている。
3)緊張を感じた時には、「何故?」と自分の心を探る習慣をつける。
れによって、試合に負けられないというプレッシャーだと自分で思
い込んでいたものが、本当は彼女を失いたくないという恐怖心によ
るものだと気づくようになる。この様に緊張の本当の原因を確り掴
むことが、それに対処する方法を探し出すのに大いに役立つ。
(2)緊張を起こす本当の原因を探る
1)不安な要素を書き出す
一度紙に出して、冷静に頭の中を整理する事を推奨する。そうす
れば、全てが悪い方に向かっているのではないと理解出来るはず。
(3)イメージを活用して緊張に対する慣れを作る
1)人間の心理は、何度も体験した事に対しては慣れが生じてきます。
同じ場面を何度も体験していれば、初めてその場面に直面した時
ほど緊張しなくなる。緊張を取り除くたむには、体験を増やすのが
一番ということになる。
2)イメージを活用し、緊張する場面をあえて何度もイメージトレーニング
してみれば良い。TVなどでスポーツの試合を見る時、自分だったらこの
ケースは緊張するだろうなという場面があったら、画面の選手に自分を
投影し、その場面を何度もイメージしてみるのも良い。
(4)過度の緊張を自分に掛け試合前に取り除く
1)試合前に緊張を感じた時は、こうした試合以上に辛い事やプレッシャー
のかかることを、その世界に入り込めるくらい強くイメージする。すると、
今までその試合が最大と思っていても、「今イメージした事に比べると、
たかが試合じゃないか」と感じる。
2)人間の体は重い物を持った後、今まで持っていた物を持つと軽く感じる。
心理面もまったく同様のことが言える。
(5)試合とは無関係なことを考えたり話したりする
1)一度試合から意識を外す。
2)今、自分がもっとも興味のあることを考える。
3)チームメイトと試合以外のことを話す。相手がいれば、一人で考える
よりも意識が自分の内側から外側に向くので効果的である。
(6)下半身を刺激することでリラックスする
・かかとから足首にかけては自律神経系のツボがある。念入りに刺激する。
この時、目を閉じて、脳に集まっていた血液や身体エネルギーが、下に
下がってきて自分の刺激した体の部分に流れ始めるのをイメージすると、
意識を試合からイメージそのものに移行させるとう意味でも、イメージ
することが体へ与える影響という意味でも、効果的である。
(7)呼吸法によってリラックスする
・リラックスするための呼吸法の一つに丹田腹式呼吸法がある。座って
いても、横にになっていても良い。その時体の各所に余計な力が入ら
ない状態を作る。
1)7つ数えながらゆっくりと鼻から息を吸い込む。
この時に、酸素と一緒にプラスのエネルギーや活力の源を体内に取り
入れているイメージを描く。
2)吸息したものを、へそ下3センチくらいの所にある丹田という場所に
貯め込むイメージで、5つ数えながら止息する。この時に、丹田の所に
風船があり、ゆっくり膨らんでいくイメージを持つとわかりやすい。
3)7つ数えながらゆっくりと口から吐息する。
この時は体内にあるマイナスのエネルギーや不安、恐怖などを、全て吐き
出してしまうイメージを描く。
4)これを繰り返しながら、体の隅々までマイナスのエネルギーからプラスの
エネルギーに入れ代っていくのをイメージし、少しリラックしてきたなと
感じたら、自分の好きな落ち着く色が、全体をオーラのように覆っている
イメージをする。これは色彩心理学の観点からも効果的である。
(8)ブリージング呼吸法で思考による雑念を消す
1)緊張の一つの原因であるマイナス思考による雑念を消すための呼吸法に、
ブリージング呼吸法がある。この方法は口を閉じ、鼻だけでスッハスッハと
短く素早く呼吸する方法。
2)これを3分間くらい続けると、脳に運ばれる酸素の量が通常より低下する。
すると、弱度の酸欠状態になる。そのため頭の中がボーッと真っ白な状態に
なり、思考力そのものが低下する。するとマイナス思考も弱体化する。
注)基本的に3分間くらいが適当だと考えられる。勿論、個人差があるので
要微調整。
3)このブリージング呼吸法終了後、体を大の字にして横になり、丹田腹式
呼吸法を行うと効果的である。
(9)プレー直前に120%の力を出して望む
1)本番でプレーする前には、あえてそのプレーを120%の力で行ってみると
いう方法もある。これを何回か行うと、いい意味で無駄な力が抜けて
筋緊張が緩む。
2)試合前のウォーミングアップなどで、顔、首、肩、右腕、左腕、胸筋と上から
順番に、パーツごとに思い切り力を入れた後、力を緩めていく方法もある。
競技部 田口