【特集】バレーボール指導論⑧:トレーニングの効果
(2015/4/11更新)
・「超回復」が起こることにより筋力アップが可能になる!
(1)十分な「休息」をとると「超回復」が出現
①筋力トレーニングは毎日行っては行けない。休息の日を程よく挟まないと、
筋肉に劇的な現象が起きない。その劇的な現象とは、筋肉のレベルが
トレーニング前より高くなる事。
②この不思議な現象を、トレーニング用語で「超回復」と呼ぶ。
③トレーニングによってボロボロに傷つけられた筋肉が、休息時に体内から
栄養を補給して、破壊された筋肉組織を再合成し、次のトレーニングの
機会には、前のトレーニングで受けたダメージの程度に負けまいとして、それ
以上のレベルの筋肉に生まれ変わる。
(2)3日に1度ぐらいのペースでトレーニング
①超回復の時期は、トレーニングが終わって休息に入ってから、48時間後に
やってくるといわれている。そして、超回復の状態は、それからずっと続くの
ではなく、ある一定の時間を過ぎると、筋肉レベルは、トレーニング前の状態
に戻ってしまう。
②24時間、丸1日休んだ後か、48時間、丸2日休んだ後に、次のトレーニング
を行うようにするのが良い。2日に1度か、3日に1度と言う事になります。
どちらが良いかは、自分の筋肉の回復力に合わせて選ぶようになる。
(3)トレーニング効果を高めるウォーミングアップ
1)目的と効果
①自律神経を平時の状態から運動可能な状態に切り替えるために行う。
②心拍数が上がり、筋肉への血液供給量が増え、筋肉が力を発揮しやす
くなり、神経の伝達速度も速まって、動作や反応のスピードが上がる。
③怪我の予防
2)注意点
①長すぎると体が疲労してしまい、むしろトレーニングの効果を下げてしま
う。長くても30分程度。(受動的ウォーミングアップは除く)
②体が冷えた状態でいきなりウォーミングアップするのは怪我のもと。気温や
室温が低い場合は、動的ストレッチングと全身運動の時間を通常より長く
する。
③体調が悪い場合はゆっくり心拍数を上げていくようにする。また、心理的な
コンディションが落ちている時は、全身運動にゲームの要素を取り入れると
よい。
3)手順
①受動的ウォーミングアップ(3~5分)
・かつて受傷した部位や慢性的な痛みのある部位を受動的に温める。
②静的ストレッチ(3~5分
・関節を伸ばすことを目的としたストレッチ。余分な筋肉の緊張を取り除
き体の動きを滑らかにする。ゆっくりした動作で筋肉が伸ばされている
のを感じながら行う。但し、心身がリラックスしすぎないように注意。
③動的ストレッチ(6~8分)
・心拍数、筋温を上げていく事を目的としたストレッチング。関節を伸ば
すのに加え、徐々に運動強度も加え、リズミカルな動作で反動をつけて
行く。
④全身運動(6~8分)
・更に心拍数を上げるための全身運動。ウォーキング→ジョギング→
ランニング→ダッシュジャンプの様に、ゆっくりした動きから徐々に強度
を上げる。
⑤専門運動(6~8分
・競技トレーニングも行う場合のウォーミングアップ。サッカーのパス練習
等の具体的な競技動作を想定した運動。
(2)トレーニングの疲労を取り除くクーリングダウン
1)目的と効果
①心身を運動可能な状態から平常の状態に切り替える事を目的とする。
ウォーミングアップとは逆の流れをもつ。
②運動中にたまった乳酸などの疲労物質を除去する働きを促して、神経
や筋肉の興奮をしずめ、疲労の回復を促進させる。
2)注意点
①運動後、汗をそのままにしておくと筋肉が急速に冷えてしまう。上半身
だけでも静的ストレッチに入る前に着替える。アイシングを最後にする
場合も同様。また、寒い時期におは暖かい場所に移動してから行う。
②運動終了直後の入浴は避け、シャワーを使用すること。乳酸を除去する
ために筋肉に集まった血液が、入浴による血行促進によって皮膚や末梢
の血管に流れ込んでしまい、疲労回復が遅れる。入浴はクーリングダウン
の少なくとも30分後、出来れば1時間後。
③アイシングは主に外傷や障害の応急処置として行う。日々の練習や
トレーニングや特に酷使した部位を10分程度アイシングすることで、
障害を予防出来る。
3)手順
①軽い全身運動(3~5分)
・ジョギングなど、疲労の出ない程度の軽い全身運動を行う。運動強度は
最大心拍数の50%以下(汗をかかない程度)からはじめ、少しずつ強度
を下げていく。
②動的ストレッチ(3~5分
・筋肉の収縮と弛緩を交互に行う。これにより血液の流れを促進し、疲労
物質である乳酸の除去と筋肉のリラックス効果をうながす。
③静的ストレッチ(8~10分)
・座ったりと出来るだけ楽な姿勢をとり、各部位の筋肉をリラックスさせる。
各種目10秒以上、出来れば20秒以上の時間をかける。心理的な
リラックスも高める。
④リラクゼーション(3~5分)
・仰向けに寝て呼吸を楽にし、さらに肉体的にも精神的にもリラックスする。
競技トレーニングを行った場合も、練習直後の鮮明な記憶を利用して、
そのままイメージトレーニングに移行してもよい。
⑤アイシング(6~10分)
・痛みのある個所やとくに疲労の激しい部位を、氷や冷却剤を使って冷やす。
すでに傷害(外傷や障害)があって特に痛みが激しい場合は、クーリング
ダウンに入る前から冷やす必要がある。
(3)ストレッチメニュー例
1)殿部・大殿筋
2)下肢・ハムストリング
3)下肢・大腿内転筋
4)下肢・大腿四頭筋
5)体幹部前面・腹直筋
6)体幹部後部・脊柱後起立筋
7)肩部・きょく下筋/小円筋
8)胸部・大胸部
9)背部・広背筋/大円筋
10)腕部・前腕屈筋群
▲特集:ストレッチの基礎Ⅰ
(1)ストレッチとは
①柔軟性が向上する
・ストレッチの効果として非常に重要なのが、関節の柔軟性を高めて
可動範囲を広げるということです。たとえば、大腿内転筋の柔軟性
を高めることによって、重心を低く保つことができ、守備などにおい
てより素早く動くための基礎が出来る。
②血流をよくする
・筋肉を温め、ケガを予防する。また、練習や試合後にクールダウン
として行うのも有効である。血流をよくし、疲労物質を素早く筋肉
から出す事で、翌日に疲労が残りにくくなる。障害予防と疲労回復
はどちらもスポーツに欠かせない大切な効果である。
③神経機能が向上する
・神経機能の向上を図る事が可能。興奮を抑える、リラックスするなど
の効果。仰向けになって行う、体幹部後側面のストレッチなどは、リラ
ックス効果の高いストレッチといえる。
(2)ストレッチの仕組み
①筋肉の動きとは反対の動作を行う
・ストレッチでは、該当する筋肉が担う動作の反対の動作を行うことで
筋肉を伸ばす。具体例で説明すると、大腿四頭筋は股関節の屈曲と
膝関節の伸展を担っている。
②『伸び』の裏側には『縮む』がある
・例えば、背中を伸ばそうとして上半身を前傾させた姿勢をとります。
この時、背中の筋肉は伸びていますが、その裏側、つまりお腹の筋肉
は縮んでいます。筋肉を伸ばそうとストレッチしても、該当筋肉に刺激
を感じない場合、裏側の筋肉を縮ませる筋力が不足している可能性が
ある。
③『自力』と『他力』で筋肉を伸ばす
・「自力」とは自分の力で筋肉を伸ばすこと。たとえば伸ばしたい部分と
反対側の腕や足などを、自分の力で利用することも「自力」という。
反対に「他力」とは壁やイス、パートナーの手を借りて筋肉を伸ばす事
をいう。
・壁がある体育館やジムで行う、あるいはパートナーと一緒に行うことが
出来る環境にある場合は「他力」を利用するのも効果的である。
(3)ストレッチのコツ
①筋肉を知る
・伸ばす筋肉がどこに、どのようについて、どのような役割を担っているか
を知っておくことが必要。
・これらのことを知っておくだけでストレッチの意図を理解することが出来、
結果、ただの形だけを真似るのではなく、伸ばす筋肉を意識したストレッチ
を行うことが出来る。
②伸ばしている筋肉を意識する
・伸ばしている筋肉を意識することが大切。これを意識するだけで、何も考
えずにストレッチをするよりも高い効果を得ることが出来る。
③息を吐きながら行う
・5秒~10秒間ぐいらい息を吐くことで、緊張をほぐし、筋肉が伸びやすい
状態をつくることが可能。無理に5秒~10秒にこだわる必要はない。
④効果の出やすい環境をつくる
・極端に暑いもしくは極端に寒いところはさける。音楽をかけてストレッチ
をするのは良い。
(4)行ってはいけないこと
①急激に筋肉を伸ばすこと。
②強い負荷をかけること。特に頸部を伸ばす場合は厳禁。
③飲酒している時。
④体調が悪い時。
⑤伸ばす筋肉を負傷している時。